過去は、今としてのみ描かれるものである。

画家にとっての「過去」とは、目の前に存在する物空間を絵筆で再現しようとするプロセスにおいて、絶えず形成されるものである。人間の目は、焦点を合わせた物体や空間の細部に対して鋭い認識を持つが、焦点が外れた部分に関しては、たとえほんの少し前の視点であれ、焦点をずらすとすぐに把握できなくなる。これは、その時点で「過去」の出来事となるのである。一瞬前であれ、数分前であれ、それ以前であれ、画家にとって焦点を合わせていない物体や空間は「過去」そのものとなる。